文脈を読めない人が増えている?

〜〜〜ネット社会で浮上、反応の速さが決め手?

稲田陽子

最近、文脈を読めない人が増えているのではないかと、
ふと気になることがある。これは、以前からなんとなく
感じていたことだから、別に今に始まったことでもないの
かもしれない。とくに近年のネット社会では、反応の速さが
仕事や社交上必要である場合も多々あるに違いない。

そうした場合も勘違い以外にも、文脈を読めないために
ちゃんとしたコミュニケーションが取られていないことも
あるようである。いくら高学力だからと言って、安心
できるわけでもないらしい。むしろ学歴の高い人々の中に
文脈を読むのが苦手なタイプも思いの外多いのだという。
それが読解力のミステリーだが、やはり普段から読解力の訓練を
するのも悪くはないのだろう。

ましてネット社会の気軽さと便利さの中には、様々な情報が
溢れかえり、その多種多様な情報を整理しながら効率よく
取捨選択していかなければならない。すると、必然的に
読み方にも変化が生じてくる。全文の内容を把握するのは
当然難しくなり、印象で読む「虫食い読み」や、斜め読みなどが
当たり前になってくるわけである。「虫食い読み」は、読んで
字のごとく、まるで虫が気まぐれに穴を開けたように、印象に
残るワードを拾っていく読み方だ。それは、文脈を読んでいる
つもりであっても、実は、読んでおらず、自分で勝手な
ストーリーを作っていたりするようだ。

しかも、ストーリーは、メンタルの影響を受けるため、感情が
主体にもなりかねない。いわゆる自分の思い込みがワードを繋げて
しまうとも言えるから、斜め読みよりも案外弊害があるものだ。
こういう読み方をした後に、再読すると、またずいぶん異なる
印象に変わることもある。これで「本当はこういう意味だったのか」と、
再認識することにもなるなら、まだしもマシだ。

もちろん、文脈を読めない(読まない?)のは、ネットだけに偏る
ものではなく、リアルな単行本などにも及ぶこともあるのは言うまでもない。
レビューなどを読んでいると、そう感じることもなきにしもあらず
ではないだろうか。

ここで、注目すべき事例を挙げてみたい。
そんな事例の中でも、ネガティブなレビューは、ある意味で明快だ。
ネガティブな感想を書くために、すべてネガティブな方向に行くように
言葉が選ばれている。もっとも、方向性が複雑でなく、針小棒大な
キーワードも一つしかない分、内容は単純にならざるをえない。
それだけに、印象ワードをつなげた自分だけのストーリーに基づく
感想が実に明快に伝わってしまう。
しかし、いかにも真実そうに見えても、実際は原文のテキストから
どんどん離れていく。そのため、原文のテーマからはすっかり軌道が
外れている。全体とは関係のない姿を浮上させてしまうのだ。
こういったことは、よくあることだと思われるが、案外「自分が想定、
期待していた回答が書籍になかった」場合に出てきがちの反応でも
あるという。

これは、Amazonのあるレビューを事例としたもの。
メディアリテラシーの内在しないこうした感想が一人歩きするのなら、
ネット社会は大いに考えものとも言えそうだ。
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