1.11によせて…千島学説的治癒論貫き通した自由と幸福

~~~『荒野のジャーナリスト』はみ出した「個」と生きて

 

稲田陽子

夫の稲田が書いた『ガン呪縛を解く~千島学説パワー』は、
 HPに連載してご好評をいただき、一年間の連載後に書籍にして
 出版したものである。
 以来、たくさんの方々に読まれ、いつしか海外の人々にも広められたら
 という漠然とした思いも芽生えてきていた。
 まして、夫はもっといろいろなことを伝え、活動したかったはずだ。

そこで、この書籍を英訳すべく何年か前から翻訳作業を始め、今は完成まで
 あともう一息というところまでは漕ぎつけてきている。英訳は、私が数年前に
 翻訳スクールで英日翻訳を学ばせていただいたときの先生で通訳が専門という
 方にお願いし、私は時間が許す範囲でしか携われない。もちろん、勉強会を
 開いてネイティブの先生にチェックしていただき、いわゆる読みにくい
 「日本人の英語」にならないように配慮している。

アント英語スクールの松並さんには、家族ぐるみのおつきあいをさせて
 いただいていたが、今回の英訳のためにネイティブの先生との勉強会の
 場を作ってくださるなど、ご理解とご協力をいただいた。

しかし、本になるまでにはまだまだ道のりがあり、時間が必要である。
 ebooksの出版を予定しているが、これは、あくまでも私のいわゆる
 ライフワークであり、それだけに時折する翻訳は新鮮である。
 夫が言わんとしているゼロ・ポイント・フィールド分野の科学的な記述も、
 翻訳作業というフィルターを通すことで、さらに深い洞察や認識が
 得られるのは、やはり得がたい体験である。

なぜ人はガンになり、なぜガンは治るはずの病であると主張できるのか。
 そうしたテーマは『がん呪縛を解く』全文に流れている。
 きちんと読まれた読者の方なら、心身に働く免疫力で基本的にガンは
 自然治癒する病であると語る著者の意図や真意を理解されるに違いない。
 医療界のタブーに挑んだために好奇心を引き寄せることもあっただろう。
 しかし、夫が抗ガン剤など三大療法を受けず発ガンから10年も
 ガンと共存し、充実した活動ができたというだけで、どれだけガン患者の
 人権、人生、自由、QOLの向上に恵まれたことだろう。

ともかくも、夫がガンになっても好きなことができる人生を選べたのも、
 ガンという病の本質的な性質を知っていたからである。それも、どれだけ
 ガンを理解し、共生できるかがが鍵になる。ガンを改善するには、単に
 体の免疫力だけでなく、もう一つの「心や潜象世界」を置き去りにしては元も
 子もないのだ。
 こうしたガン観は、幸い、粒子の世界(量子物理学)や脳科学の世界からも
 サポートが得られるようになり、ガンと心身との関連性の深さも浮き彫りに
 されてきている。

その上、昨年は免疫力を高めるガン治療に貢献するとして本庶佑さんが
 ノーベル賞を授与され、免疫力がガンを治すという考え方もいわば
 「お墨付き」となった。もっとも、その考え方は対症療法の西洋医学
 そのものではあっても、ガン医療への貢献は極めて革新的なものがある。
 今ごろになって、とも思いつつも、嬉しい限りである。

夫は、「気血動の調和」の理論的根拠を示唆するその血液理論を筆頭に
 いくつものユニークな観察実験から提唱された「千島学説」を見事に
 わかりやすく解説し、ある境地と生き方が交錯するガン観を語る。
 世の中にはびこる「ガン呪縛」を解く試みを合わせ鏡の投影のように
 実践したのであった。
 それは、三大療法拒否という「挑戦」を自らに課すことを意味していた。
 その結果、夫は、進行ガンにも関わらず抗ガン剤などをする代わりに10年の
 自由な時間を天からいただいたのだと思う。

そんな強靭な意思を持つ夫との最後の日々を書き記したのが、『荒野の
 ジャーナリスト稲田芳弘』であった。ここにはターミナル医療の実態、抗ガン剤
 をしない患者への差別をはじめ様々な現実に直面したことなども記されている。
 これは、体験した者でなければわからない事実の記録であると同時に、その時
 私が(患者の妻、家族、一人の人間として)何を思い何を感じたのかという
 正直な心の軌跡に注目し、それをありのままに客観視し記録するものでもある。
 私は、現場で働く医療従事者の方々への尊敬の念や感謝の気持ちもしっかり
 持っているつもりである。だからこそ、さらにより良いシステムになるように
 患者や家族側から思い切って真実を伝えたいと思ったわけである。

また、救急車が粘り強く努力してくれたのに診療拒否をした数々の札幌の
 大病院から比べると、まだしも、最終的に引き受けてくれた病院には
 感謝の気持ちを十分に持ち合わせていることだけは付け加えたい。

とはいえ、あえて私が体験した事実を書き残してしておくことは、結果的には
 命がけとも言える使命感を持って生き、活動したガン患者でもあった
 ジャーナリストの夫へのレクイエムとなるだけでなく、医療現場が多様化する
 ガン患者にも開かれた眼差しを持ってほしいとする患者側の切なる思いと願いを
 託すことにもつながる。
 これが本書の目的の一つであった。

書籍には、書いていないが、夫は、取材のために化学物質の被曝に遭遇し、
 入院した経緯がある。その後体調が緩慢に衰え、発ガンに関与したのだと、
 私は認識している。『荒野のジャーナリスト』と私が命名したのも、
 そのことも背景にあった。夫は、第一治るつもりでいたのだから、
 その話を講演にもhpにも書くことはなかった。
 そんな夫のポジティブなエネルギーを、私は「荒野」という言霊に込めた・

『ガン呪縛を解く~千島学説パワー』も、刊行から第6版を重ねている。
 版を重ねるごとに、新しい情報を加えるなどの工夫をしており、とくに
 2011年版以降には、夫との最期の日々について「呪縛?とんでもない。
 (略)10年!この希望と沈黙の生命力」という文章を30ページにわたり
 付け加えた。これが、『荒野のジャーナリスト』のいわば、前身となっている。

こうして書いてみると、悲壮感が漂ってしまいそうだが、実際には、夫は
 いたって楽天的に振る舞い、確かにガンを「自愛、慈愛」する共生は
 ポジティブと言えた。そこには、いわゆる「勝った、負けた」の世界も
 興味本位の世界も存在しない。
 私は、そこに稲田の本懐を見ている。ガンは、その人のトータルな全体を映す
 バロメータであり、治癒への梯子は外されることはない。
 ただあるのは、「摂理」なのかもしれない。

夫は、最後まで意識があり、拙著に著したように医療過誤もあったにも関わらず、
 概して苦しみの影はなかった。千島学説的治癒法とその生き方のパワーが
 功を奏していたのだ。悲しみを包み込む慈愛の面影を私に残しながら、夫は
大往生した。これだけは何と言っても、大いなる救いであり、神様からの
ギフトであった。
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