受賞作品決定!『はるか摩周』読書感想文コンクール

「物語に引き込まれた!」素敵な力作、ありがとうございます!

稲田陽子

『はるか摩周』読書感想文コンクール(共催/弟子屈町)の
 受賞作品が決まりました。ささやかながら「読書の夢」広げる
 コンクールにご応募、ありがとうございました。
 ドラマ化をめざしたいという思いも、さもありなんと
 思われるような、意外性のある物語展開に思わず
 引き込まれてしまう…そんな原作の感想文、枚数規定は、
 5枚から10枚でしたが、ほとんどが10枚もしくは
 それに迫るもの。意欲的に取り組みご応募された中から、
 以下のような作品が選ばれました。

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 最優秀賞は「該当作なし」とし、
 これに代わって新設された「最優秀特別賞」を
 2作品が受賞。
 ◎最優秀特別賞 2名(各賞金2.5万円)

 土肥 友子様(札幌市)
 北山 公子様(札幌市)

 ◎優秀賞 1名(賞金2万円)

 江藤 直樹様(釧路市)

 ◎入選・特別賞

 藤 泰人様(弟子屈町)

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 受賞作は、いずれも年輪を重ねた方々の人生観や洞察力が
 生き生きと息づいた力作が揃いました。
 原作を自身の人生や思い出、また戦争やそのつらい体験を
 語ろうとしなかった父親の姿に重ね合わせるなど、
 それぞれの作品は、その人にしか語れない醸成したものを
 感じさせ、甲乙をつけたくないものばかりでした。

 ただ、難点を言えば、文章の推敲や内容の把握に多少の
 課題を残すと思われる部分もあり、残念ながら最優秀賞は
 見送りましたが、どの作品にもその人らしさや独創性があり、
 いずれも年輪を重ねた「個性作」でした。

 そんな中から、
 「最優秀特別賞」に札幌市の土肥友子様、同じく
 札幌市の北山公子様の作品が選ばれました。

 土肥さんの作品は、原作にご自身の日々や両親の時代を重ね、
 魂の揺さぶりを体験する物語として最後までぶれないで
 書き上げています。テーマを一点に凝縮した表現力が感動的な
 まとまりのある一文となりました。
 とくに戦争に特化して語る後半は、遥の義父となった「巧」と
 ご自身の父親の姿をだぶらせて、戦争の残酷さ、悲しさ、
 切なさを表現し、読者を引き込むリアリティを感じさせます。

 一方の北山さんの作品は、長い物語を最初から最後まで
 楽しんで読まれているのが筆から弾き出て伝わり、
 「エンターテイメント作品を読んでいる」という視点を
 どこかに持ちつつ、客観的に全体としての作品に寄り添って
 いるのが評価されます。一点、巧と遥の心理については、さらに
 突っ込んだ観察が期待されます。

「優秀賞」は、釧路市の江藤直樹様が受賞されました。

 江藤さんは、ご自身の回想や物語をたどる実際の旅に
 原作の物語を絡ませていくというユニークな手法で書かれ、
 「超感想文」として次第に物語の核心に迫っていきます。
 作品は、懐かしい故郷・川湯への思いに満ちて、物語と
 つながり、テーマを彩る「神への信仰と大いなる愛」が
 小説の大きな精神的な柱であることを示唆するなど、この
 小説のキーワードをよく掴み取っています。

 そして、「入選・特別賞」に選ばれたのが、弟子屈町の
 藤泰人さん。

 藤さんは、達者な文章と独特の感性で物語の最終着地点
 となる「事件」をリアルにクローズアップし、鋭く真相に
 切り込む鏡を置いて、読者に問題を提起してくるようです。
 読者は、飾られたイメージを取り去られたリアルな現実に
 なす術を失うのですが、作品は、おそらく物語の底に用意
 されているはずの救いにもいまだ目をやりたくない、そんな
 鬼気迫る衝撃についてあえて強調している「異色の感想文」と
 なっています。一部分筋書きの混乱があり、惜しまれます。

 より多くの人々にこの『はるか摩周』の素晴らしさ、面白さを
 伝えていきたいと思っています。この小説は、下巻まで来たら、
 もう一気読みの誘惑に勝てなくなると、言われるほど、
 「引力の強い」魅力のある物語と言えます。
 ぜひともドラマ化を達成したいものですね!
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