~~~食によみがえる自然
稲田陽子
身土不二と言えば、マクロビオティックを連想する人が
多いのではないだろうか。その昔、千島学説を提唱した
千島喜久男博士とマクロの創始者であった久司道夫氏の
交流は、大きな共感に満ちていたのは推して知るべしで
ある。自然を根底に据えたこの二人の思想家の知恵は、
現代の私たちにも大きな示唆として与え続けられている。
身土不二とは、体が地球の自然界の材料で出来ており、
環境である自然と身体は切り離せられないものという
意味である。これは、量子論的な発想で考えると、
いまはもっとわかりやすく了解されやすいところが
何とも現代的な食論ではないだろうか。端的に言えば、
千島が唱えた「食べ物が赤血球になる」という理論その
ままである。
すなわち、食べたものが腸で食物モネラとなったものが
次第に赤血球に変わっていき(AFD現象)、それが核のある
白血球を介し、体細胞になっていくわけである。千島は、
この誠実な観察事実を発表し、千島学説の原理の一つとした。
食が血となり肉となるというのは、よく聞かれるが、
千島学説的に説明がすでになされている。量子論的には
さらに明快なイメージが付与されるようになったと言える。
だからこそ、体に良いものを求める需要も高まって、農薬の
汚染をできるなら避けたいと思うようになり、できるだけ
有機野菜や無添加のものを求めるようにもなっている。
そうした考え方が発展し、地産地消という感覚も広まって
いるのはもう言うまでもない。地場産業が発展するからという
こともあるものの、まずは近隣で採れた朝採り野菜には
人々の安心感がある。長い旅をせずに新鮮であることも
大きく、移動エネルギーも低減され、環境負荷が少ないことも
特徴である。
しかも、栄養価の高い旬のものも、野菜だけでなく、水産物でも
豊かな恵みとしてすぐさま食することができる。いい食を得るには、
自然という環境がものを言うようになるわけで、健康という恵みが
どこから来るのか、考えざるをえなくなっていく。すべては、そこが
出発点ではないかと、真剣に考えざるをえない。
身土不二は、いまでは地産地消という感覚の中でさらに発展していく
ことが必要だ。温暖化で自然環境にも厳しさが増す中、よい土作りを
絶やさずに、不耕起栽培もよいのではないだろうか。自給率を
上げていくことも視野に入れながら、新しい身土不二が生まれることを
願ってやまない。
高齢になれば、健康維持も大きなテーマとなっていくに違いない。
介護問題にも、意外な食分野から解決の糸口が生まれるかも
しれない。今こそ、千島学説的食養生が大切になるのではないだろうか。
加えて、薬に頼りすぎないのも、健康への入り口となるはずだ。
参考/『ガン呪縛を解く~千島学説パワー』(稲田芳弘著)