~~~結局、助け合いの輪
稲田陽子 誰でも避け難く年を取り、老いを考えなければ ならなくなる。どう年を重ねるかは、人それぞれ異なるが、 よい老後を願うのが自然の感情であろう。ところが、 ここ最近、本当に願うような老後が訪れるのか不安に なる現象も現れ始めている。 温暖化による超猛暑も突然の「招かれざる客」で、高齢者の 熱中症リスクが大幅に増えている。適応環境の変化は、 一人暮らしの高齢者には大きな負担となり、生命の危険に まで及んでいる。しかも、認知症を患ってしまった場合には クーラーがあってもつけ忘れてしまう、水分を十分に摂取 できないなど、さらにリスクが高まってしまうようだ。 核家族化に加えて、少子高齢化社会となっている現代社会では、 一人暮らしがますます多くなると思われるなか、2025年問題、 2030年問題が浮上している。いずれも高齢者の人口に占める 割合の増加により生じるさまざまな問題を指している。 2025年には、団塊の世代と言われる後期高齢者が5人に一人に なり、2030年には、65歳以上の高齢者が人口の3割を占める。 これは、労働力不足や医療・介護問題に課題を突きつけることに なる。 こうした問題の解決に、介護施設などでは、労働環境や待遇の 改善に力を入れており、ある程度の成果を上げているという。 確かにコロナ時代には人材不足となり、現在も閉鎖せざるを えない施設もあるというが、一定の改善が実現したところも 少なからず存在しているのは救いである。 ベストセラー作家で「第三の新人」と言われた曽野綾子さんは、 同じくデビュー当時「第三の新人」であった三浦朱門さんを老老 介護をした体験を書籍にした。『夫の後始末』と、『続夫の後始末~ 一つ屋根の下で』がそれだ。これは、介護の将来を見極めれば、 今後老老介護や自宅介護が増えるに違いないと見据え、綴った ものだという。 書籍は、夫との日々がユーモアと機知に飛んだ表現を 駆使し、豊かに描かれている。作家でもある自己を しっかりと持ちつつ、妻、家族として、人として夫の介護を した様子がありのままの夫の感覚とともに伝えられる。 介護には、自力でできるところは自分で行うなど、 曽野さんらしい決まりごとを作り、時に演劇やオペラを 楽しむこともできた。一種の膠原病を患っていた作者が自然体で 心込めて続ける介護の基本が垣間見られるところだ。本編、 続編ともに暖かい愛がじんわりと漂っている。 書籍のように、家で暖かい介護を受けられるのは幸せなことだ。 介護される側もそんな良いことはないが、これが万人に当てはまる わけでもない。個人の介護が難しい場合もあり、どうしても複数の 介護人のいる施設が必要な場合もあるからだ。と、なると、 やはり介護人不足にならない工夫が今後も大切な課題になりそうだ。 スーパーエイジャーという言葉を最近耳にするようになった。一言で 言うと、脳の萎縮が少なく、中年期の平均の認知能力を保持している 健康な高齢者(80歳以上)ということらしい。しかし、すべての人が そうなれるわけではない。むしろ、病気持ちの人は珍しくない。皆、 何らかの健康不安を抱えているわけである。それでも、万人にとって 健康は貴重な宝であり、それに向かって努力する姿も多い。 千島学説的に言えば、「気血動の調和」に向かうのが良いということ になる。自助努力も合わせて考えるのは、生きがいにもつながるに 違いない。