介護の未来は?

~~~三浦雄一郎さん、富士登山実現!要介護4から1へ

稲田陽子

少子高齢化社会の先行きは明るいのか暗いのか…。
以前から言われていたことだが、高齢化社会を支えるだけの人材が
不足している。特にコロナ禍に見舞われて、介護する側の人手不足が
ますます深刻になったという。そんな厳しい高齢化社会にも、
一筋の希望を与える出来事がある。

冒険家でプロスキーヤーの三浦雄一郎さんのエピソードがとかく
希望の失われやすい時代にあって、励ましを与えてくれそうである。
プロの冒険家なのだから、多少困難なことができても当然だと
考えてしまわないだろうか。しかし、『諦めない心、ゆだねる勇気』
(三浦雄一郎/三浦豪太著)という書籍を手にしたとき、私の印象は変わった。
三浦さんは60才で現役を引退した後は、人生を思う存分謳歌しようという
心意気とは別に、日が経つにつれて、メタボ体型にすっかり変化して
いたと語る。それは、命を脅かすほどのもので、そこから三浦さんの
「マイナスからの再スタート」が始まった。

三浦さんは、大きな希望を心に臨ませる。この時は、エベレスト
登頂である。メタボを解消するのに、まずは大きな目標を立てる。
この目標を指針としたリハビリは、日常的に一進一退を繰り返しながら、
コツコツと日々無理せずに行われていく。こうして、メタボが
解消されると、その小さな努力がやがて大きな流れを作り、70才、
75才、80才の時にエベレスト登頂(80才という最高齢での登頂で
ギネス記録)への成功を可能にした。この話だけでも、素晴らしい
快挙であり、人々に希望を与えるに十分に違いない。

ところが、三浦さんの挑戦はどんどん広がっていく。アコンカグァ
遠征後の86才には、90才でのエベレスト登頂を夢見た。しかし、その年、
脳梗塞にも見舞われ、その夢はそのままになるも、三浦さんの
運命はさらなる大きな高みを目指すことになる。

三浦さんのリハビリと夢は一体になっており、それはいつも楽しいもの
なのであり、可能性に満ちてもいる。だから、87才で要介護4に
陥ることになる重篤な「頸髄硬膜外血腫」と診断された時も、決して絶望する
ことはなかったという。さすがに重たい病状に落ち込むことはあっても、
基本の姿勢は変わらなかったのだと、推察される。その思いが、三浦さんを
何度でも「マイナスからの再スタート」という挑戦に駆り立てるのだろう。

このリハビリも辛さの中でも三浦さん流の「楽しさと夢」が内在しており、
しかも今度は富士登山という目標がともに歩いている。チーム三浦の
仲間たちとともに、昨年の夏、三浦さんはついに富士登山を実現した。
この時、要介護度は1となっていた。

たとえ「三日坊主」になっても、要はそれも「マイナスからの再スタート」
なのだと希望を失わない。これが大切なことだと、三浦さんは言いたいのだと思う。
小さな積み重ねが、大きな大河にいたるからである。あるいは、
大自然の冒険家、三浦雄一郎さんの心はいつも静かなのかもしれない。

いずれにせよ、介護の問題は、一筋縄ではいかず、
個人のレベルを超えていることもあり、人手不足は深刻である。

参考図書/『諦めない心 ゆだねる勇気』(三浦雄一郎/三浦豪太)
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