~~~体内に蓄積するピーファス(PFAS)
稲田陽子 欧米の基準値よりも大幅に緩和されているとも語られる日本の 水道水のピーファス。この物質は、有機フッ素化合物の一種で、 ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物の 総称だという。自然界で分解されない人工の物質のため、フォエバー ケミカルとも呼ばれている。 これには、有害性があり、体内に蓄積される性質がある。 発がん性の促進や免疫力を低下させるとも言われている。 しかも、蓄積されるという性質上、入浴などでも人体に影響を 及ぼす。そのため、飲用よりも注意が必要だとする声も聞かれる。 新しい公害だとする研究者もいるほどのものだが、米国では より重要視され、EPA(環境保護庁)が水道水中のピーファスを ゼロにする方針すら立てたそうだ。米国の水道水の45%から ピーファスが基準値を超えて見つかっている現状に深刻さを 感じさせる。とはいえ、そうしたゼロ対策に対して、業界団体が 反発し、提訴までするなど話題にこと欠かないようだ。一方、 日本でこのピーファス問題が始まったのは、沖縄の基地からで あったという。今や、それがあちこちでピーファスが検出される ようになり、全国的な問題となっている。 それにしても、自然界で分解できないものを作ったのは、人間であり、 人間社会である。それがどのように生態系に影響するのかなどは、 考えに及ばないのだろうか。以前にもプラスチックが海の生物が 飲み込んでしまい、害を与えていると報じられていたことがあった。 今回のピーファスも同様に有害だが、これが河川や地下水から検出され、 もっとも日常的な水道水が危険にさらされている。水は日々必要であり、 欠かすことができないわけだから、ことは深刻だ。 この深刻さの基は、現代社会が便利さや効率性を優先させたシステムに 支えられていることに関係がある。その社会には自然が欠落した 頭でっかちな欲求が充満している。自然の大切さも、頭ではわかって いても、感覚的にはよくわからなくなっているのかもしれない。 養老孟司さんが、実は人も自然なのに、実際には意識が作った 世界に生きていると語る。それは、脳内で作られた世界とも言える。 この勢いが、さまざまな効率的な暮らしを作りだし、それが健康や 生態系にどのような影響を与えるのかは、考えに入らなくなっている かのようだ。それどころか、進化の一つのカタチだとも思っている にちがいない。たしかに、それは、バランスを失わなければ、その とおりでもある。しかし、実際問題として環境を汚染すれば、自然の 循環や恩恵を失っていくだけである。 ピーファスは、水道水の汚染に関わるだけでなく、コーティング加工 されたフライパンなどの調理器具、シャンプーなどの泡製品、また防水 加工品などさまざまな日用品や工業製品にも含まれているというから、 事態は簡単ではない。 参考/ジャーナリストのシェリーめぐみさんの記事 養老孟司さんの動画