『ガン呪縛を解く』と「生きがい療法」

~~~ガンの呪縛を解くキーワードとは?

稲田陽子

夫の稲田が自身のHPで連載した『ガン呪縛を解く』を
書いていた間、進行ガンの告知を受けていたのに、
その忙しさの中にあっても、ガンは転移も進行もしていなかった。
さまざまな資料を調べたり、取材をしても、また徹夜で
執筆しても、免疫力を下げることはなかったようだ。
これは、自発的に自分の書きたいことを書くことに
終始していたことも功を奏している。

つまり、好きなことに熱中し、没頭している状態だという
ことである。締め切りなどに追われれば別かもしれないが、
ストレスがストレスにならない条件が揃っていたのかもしれない。
もっとも、レギュラーの仕事もあったが、それ以上に
ジャーナリストの自身の執筆活動に心が向いていた。

ここで、想起されるのが、伊丹仁郎博士の「生きがい療法」
である。伊丹博士は、ガン患者のQOLの向上に役立てるために、
自然免疫力を活性化させる療法を編み出した。この療法は、
森田療法と精神腫瘍学を融合したもので、ガン患者の免疫力を
高めるほか、鬱などのガン患者の精神的なサポートを行ったり、
家族や医療者との心理的な関係側面にも配慮していく。

とくに免疫力を高める活動として、漫才や落語観賞、富士山や
アルプス(スイス)登山が注目された。漫才や落語などで
体験する笑いは自然免疫力を上げることが科学的に実証されている。
また、自ら作品を作り出品する作品展なども、積極的に行って、
ガン患者の生きがいの創造につなげている。

こうした生きがい療法は、ガンをありのままに受け入れ、その
上で生きることの喜びを感じることであり、この姿勢が患者の
自然免疫力を高め、再発率を下げ、延命率を上げているという。
国立がんセンターのデータによると、初発のガン患者では、
適応障害が13~14%、うつ病が4~5%だが、進行するにつれて
さらに増え、末期には半数以上が重度のうつ病に一度は罹患するという。
ガンと精神との関係は、無視できるものではなく、生きがい療法は
この関係性を改善し、ガン患者に良好な影響を与えるものと
言える。

千島学説的には、生きがい療法は、気血動の調和に支えられており、
気の充実が血すなわち血液を健康にし、さらに食養生で血が養われ、
キラー細胞の活性化を促すわけである。この事実が、ガンを抑制する
ことを表している。ここにガンという病のヒントがあるように思われる。
『ガン呪縛を解く』は、その意味でガンの呪縛を解いている。治療も
選べるものであって不思議ではないのではないだろうか。生活改善や
生きがい創造を含めてホリスティックな治療法が、さらに活躍の場を
広げられるのを願いたい。これには、患者と医療者がともに理解しあい、
学びあうことも大切なことかもしれない。
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