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二風谷ダムと流木騒動

20030907161316日高地方を襲ったこの前の台風で、大量の流木が発生しましたが、
それに関する報道が、今日のテレビ「噂の現場」でなされました。
それを観て、なんとも腹立たしい思いにさせられました。
あの二風谷ダムは、どう考えても理不尽そのものだからです。
しかし流木報道はあっても、二風谷ダムの問題は全く報じられていません。
もしあのダムがなかったとしたら、
こんなにひどい被害にはならなかったはず…なのにです。

テレビでは、地元の方々が証言していました。
ダムが欠壊しそうだということで、ダムの水が放流された結果、
一挙にものすごい勢いで濁流と流木が流れてきたと…。
もしそこにダムがなく、沙流川が自然に流れていたとしたら、
こんなひどい災害は起こるはずがなかった。
これは明らかに「人災」そのものであると…。

二風谷ダムは、「苫東」に工業用水を提供するために計画されました。
しかしご存じのように、「苫東計画」はすでに破綻しています。
ということは、二風谷ダムを作る必要など全くありませんでした。
たとえ工業用水が必要だったとしても、
大切なアイヌ文化の重要拠点は避けるべきだったはずです。
にもかかわらず、ダムはアイヌの聖地をあえて潰す格好で計画されました。

実際、二風谷を訪れてみると、それが鮮やかに実感できます。
「まるでラブホテル」のようなセンスの悪い毒々しい建物が、
あたかも「アイヌ制圧の象徴」のごとく建っています。
その光景を目の当たりにすれば、
アイヌでなくても顔をしかめたくなってしまいます。

ダム建設に対しては当然のことながら反対運動が起きましたが、
そんなものはあっさり無視されて建設が断行されました。
これに対して萱野茂さんたちは裁判に訴えますが、
結果は、以下の通りでした。

「先住少数民族であるアイヌ民族独自の文化に最大限の配慮をしなければならないのに、必要な調査・研究などの手続きを怠り、本来最も重視すべき諸価値を不当に軽視ないし無視した」…と建設省官僚を痛烈に批判し、
「建設省官僚が事業認定した二風谷ダムとそれに基づく北海道収用委員会の強制収用裁決は違法」…と断じながらも、しかし、
「ダム本体が既に完成し貯水されているのを考慮し、二風谷ダムは違法と明快に示した上で、収用裁決取り消し請求は棄却する」
と判決されてしまったのです。

つまり、ダムは違法だけれども、作ってしまったものは仕方ないということです。
これに対して原告団は、
「二風谷ダムの本当の建設目的は、そもそもダム本体と周辺の土建工事そのものだけなのだから、せめて貯水などせずに、水門を開けたままにしておいてほしい」と訴えました。
しかし、その訴えも空しく、アイヌの聖地は水没させられ、アイヌ文化の継承に致命的な打激を与えることになってしまったのです。
そのときに、再び訴えました。
「貯水などしたら、環境への悪影響、防災面での地元住民の危険増大の心配がある」と…。

そして、今回の台風で、その懸念がそっくり現実化しました。
ダムは作ってしまっても、もし貯水などせずに水門を開けっぱなしにしていたら、今回のような被害は出なかったことでしょう。
しかし実際には、台風の直前に、むしろ水位を上げていたのではないかと疑われています。
テレビでは担当者が「そんなことはない」と否定しましたが、
台風が襲った翌日にはトライアスロンが予定されていたそうですから、
競技者のために水位を上げていたことは十分に考えられます。
水位のことはともかくとして、ダムそのものが被害拡大に加担したことは否めない感じです。
このことは、これからしっかり調査していただきたいと思います。

台風のあと、高橋北海道知事が現地に飛びました。
もちろん救済が当面の課題には違いありませんが、
と同時に、ダムの撤去を検討することも必要ではないかと思います。
なぜなら、このダムは全く何の役にも立っていないだけでなく、
懸念されていた災害に「人災」まで加えてしまったのですから…。

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