~~~観光などで人的活動の増加
稲田陽子
環境汚染は、手付かずの大自然の宝庫と思われた
南極も例外などではない。確実に進んでいるという。
この20年で急激に増えた観光客の訪問がその要員になって
いる。その度重なる訪問は、海水温の上昇で溶け出して
いた南極の氷をさらに融解させることにもなる。
汚染は、船舶や飛行機やライフライン由来の化石燃料の燃焼
から来る重金属などの微粒子によるものだと判明している。
この微粒子の増加が、南極の雪や氷を融解させ続けている。
人間の人為的活動が、環境に影響を与えているわけである。
これは、とてもシンプルな環境破壊の実験「場」なのかも
しれない。南極という手付かずの大自然が汚染され、温暖化
されていく状況が非常にわかりやすく見て取れるからだ。
私たちは、地球の温暖化の現場におり、日々何気なく暮らし、
その異変になかなか気づかず、また認めるにも時間を要して
きたが、南極のような事例を見ると、そうした現状が
シンプルに容認されるようである。
例えば、アスファルトが太陽の熱を吸収し、周りの温度を
上昇させていくなどは、長い間気づかれないような
変化をもたらしている。これは、ヒートアイランド現象と
呼ばれるように、気温を上昇させて、温暖化に拍車をかける。
さらに言えば、ひと頃もてはやされたソーラーパネルがある。
これも、アスファルト同様に熱を吸収して電気を蓄えていく
ため、周囲の気温を上げてしまい、温暖化を引き起こすのだ
という。期待された代替えエネルギーも、温暖化の時代、
別の環境問題になってしまったようだ。
ところが、こうした環境負荷問題も、文明化した社会では、
本当に目立たないものとして捉えられ、温暖化とあまり
結び付けても考えられなくなっているのかもしれない。
良い悪いは別として、日々の環境は、人々にとって当たり前の
世界と映るからだろう。ところが、南極は、違っている。
とてもシンプルに私たちに提示してくるので、逆に、そこから
現代文明が透かし見えてくるアイロニーがある。
その昔、夫の稲田と『エコろじー』(環境オピニオン紙)を
出していたことがあったが、その取材のために温暖化問題を
テーマとした北大大学院のセミナーに参加したことがあった。
当時教授だった小野有吾さんらへの取材も興味深いものであった。
20年以上もまえのことであるが、セミナーでは温暖化への
疑問もありながら、温暖化の状態をわかりやすく解説されていた。
発生する「症状」は、豪雨と旱魃、水害、生態系を示すブラキス
トン線の北上、産物の北上、竜巻、夏に降るヒョウの出現、
日本の季節の喪失などが記憶に残る。こうした症状は、まさに
いまの日本の気候を想起させないだろうか。
今後、さらに温暖化が進み、沸騰する地球になるのか、あるいは
太陽活動の低下で地球が寒冷化に向い、それが救いとなるのか、
誰にもわからない。地球もガイアという生命体なのかもしれない。