~~~自然治癒と心身一如の弁証法
稲田陽子
時折、養老孟司さんの動画を見ることがある。そこに
たまたま医療の話があり、耳を傾けていると、まさに
『ガン呪縛を解く』のテーマにつながるものがある。
それは、自然治癒に関わる問題提起にもなっているように
思われた。人の体も、自然であると言われている養老さん
らしい感性がたくさん感じられる話が展開されていたからだ。
もともと日本の医学は、東洋医学の伝統が強く、独自の漢方
医学を発展させてきたと、養老さんが語るように、明治になるまで
日本は西洋医学の世界ではなかった。西洋医学が正統派であるという
認識のもと明治政府が改革をしたため、東洋医学は、それまでの
地位も権威も失ってしまったわけである。それにともない、日本
にも科学的だが機械論的な発想が入り込んできた。これは良い面だけ
でなく、もちろん問題も含んでいることになる。ことにそれまで
当たり前のように思われていた「気の世界」が、少なからずダメージを
受けてしまったのは言うまでもない。
もっとも、東洋医学の国でも、インドや中国は西洋医学とともに
自国で発展した医学を否定せずに、そのまま並行的に温存し続けて
いるという。インドでは、アーユルベーダであり、中国では中医学、
韓国では韓医学と言われているものだ。しかし、なぜか日本だけが、
日本固有の漢方医学を正統派から外し、西洋医学のみを推奨することに
なったという。(ref/養老孟司動画)
マックス・ピカートの著作である『沈黙の世界』には、そうした
西洋医学オンリーの医療に対する何らかのアンチテーゼが
含まれている。稲田は、そのピカートの著作が若い時からの
愛読書であり、深い共感を持っていたと述懐している。
この書籍には、稲田が取り組んだ『ガン呪縛を解く』ための
興味深いメッセージが含まれているようだ。沈黙の世界が追放された
今日の医療に、ピカートが見たものとは、癒しと治癒力の忘却であり、
その内的世界の喪失であると言える。それをピカートは、「喧騒の
科学と医療」とし、人間の危機として捉えていたと、稲田は書き記して
いる。そのことは、ピカートがガンという病を沈黙が追放されたために
引き起こされた、いわば復讐なのだと語っているのに呼応する。それを
ピカートは『病と死と沈黙』の中で次のように表現した。
「(略)その沈黙が復讐的であるのは、それが追放されたからなのだ。
癌はそのような病気である」
ここで言う「沈黙」について、稲田は「量子真空世界」をイメージ
している。量子コヒーレンスの世界観を持ってしてみるなら、そこは、
「沈黙」の持つ具体的で深淵な世界観が始めもなく終わりもない宇宙の
言い表せぬ広がりとともに想起されてくるものだ。稲田は、その世界に
千島学説を見ており、とりわけ千島博士が提唱した「気の世界」や「心身
一如の弁証法」との共通項に注目していた。養老孟司さんが動画の中で何気に
言葉にしていた東洋医学と気の関連性は、今だからこそ貴重だ。気は、
その昔日本人には馴染みの言葉であったように思われるが、あまりに科学
実証主義的(科学信仰的)ないまは、少し気を遣うものになっていたの
かもしれない。
稲田は、この気について量子真空の世界観からも説明している。さらには、
千島学説は荒削りのところはあるものの、非常に現代的なものであったと、
書籍に記した。別段、稲田は西洋医学の否定論者ではないのだが、
「喧騒」に陥り、「沈黙」の世界を忘れがちになることもあるガン医療の世界に、
やはり忘れてはならないこともあるのだと、『ガン呪縛を解く~千島学説
パワー』の中で渾身のメッセージを伝えようとしている。
最近は現代医療にホリスティックな感覚を取り入れようとする動きも感じられる
のは一つの希望である。ことに再発に強いとは言えないガン患者にとって、
これまた健康回帰への一つのよすがとなるに違いない。プロポリスを開発し
ご自身の進行ガンを乗り越えた松野哲也博士も、ガンはどのステージからも
治癒の希望があると、語っているように、治癒力は、最後まで希望を捨てさせ
ないようだ。
参考/『治るがんの愛と運の法則~松野哲也博士のプロトコル』(松野哲也著)
『ガン呪縛を解く~千島学説パワー』(稲田芳弘著)
養老孟司『動画』