~~~温暖化の指標が語るものとは。
稲田陽子
今年の夏も、例年のごとく異常気象がささやかれ、気温の
上昇も半端ない。毎年言われるその異常気象も、年を追う
ごとにその度合いが大きくなっていくのが体感できる。40度
近く気温上昇しているところもあり、これが常態化していくのは
流石に危惧を覚える人も多いことだろう。
そんな猛暑の訪れが伝えられる日々、N.Y. の M.G.さんから
メールが届いた。私のブログを読まれての感想を兼ねたもの
だったが、その中で、北極のシロクマも増えていることに
触れていた。私が記事に書いた「北海道のクマの増加」に
関連して、同様な現象が北極のクマ事情にも現れているという。
宮沢賢治の『なめとこ山の熊』という童話についてのエピ
ソードを含む M.G.さんのメールを興味深く読んだ後に、
以下の言葉が目に入る。
「(略)“世界“ではシロクマが絶滅に瀕していると盛んに言われているが、
現実にはシロクマが増えすぎて、人の住むエリアに多くが移動して
いることなど。あの頃、アメリカでは学校でも子供に“かわいそうな
シロクマ”像が植え付けられ、涙ながらにそのことを話す子供もいて、
違和感があったのを覚えています。」
これは、いったいどういうことだろうか。どうやら、シロクマも
ヒグマと同じように自然保護の機運が高まるなか、狩猟が禁止された
ために、増加の一途をたどったということらしい。だから、温暖化の
指標のように思われていたシロクマの減少は、実は神話になっていて、
実際には、北極海の氷が溶けてもそのためにエサが獲れないという
ことでもなく、保護された分サバイバルし増加傾向にあるわけである。
温暖化教育で、すっかり「シロクマ神話」が浸透しているとも言えるが、
だからと言って人為的な温暖化が嘘だという懐疑論に移行してしまうのも、
おかしなことに違いない。研究筋によれば、シロクマは、ただ、春先の氷の
融解が緩やかな時期に狩をしてしっかり栄養をつけられたのであり、氷の
減少が問題になる9月に食べ物が得られなくとも、深刻な影響がないのだ
という。この時期の海氷の断片とシロクマの取り合わせは、よく取り沙汰
されて、周知されているだけに、海氷が溶けると、シロクマの絶滅と人為的
温暖化というイメージがすぐに結びつけられてしまう。これは情報の落とし
穴と言えるのかもしれない。
さらには、寒冷化という地球の自然の成り行きも心に留めておきたい
ものだが、グリーンランドの氷が溶けているという事実もあり、海面上昇に
影響を与えていく懸念が高まっている。
もう一つ気になるのは、地球の地軸がずれてきている報告があることだ。
これについては、M.G.さんのメールにもあり、自然の体感を失わない人々が
日の出、日の入りの太陽の位置が通常でないという変化に気づき、Nasaに
知らせた話が書かれている。以下は、その抜粋である。
「話はちょっと逸れますが、どこで読んだかちょっと元を確認できませんが、
アメリカのネイティブインディアンが10年以上前だったか、
NASAに手紙を送ったという話。
NASAがいろいろと調査をしているのを知って、
彼らが日々の経験から分かっている自然の状態を知らせようとしたのです。
太陽が昇ったり沈んだりする位置が変わってきていること。
(これは遅まきながら、私もここ何年かで体感しています。)」
「もちろん、ネイティブインディアンの体験情報も、
思えば地軸がずれることや磁場が変わることなど、少なくともその可能性も、
地球の上で生きる人間にとっては、最重要であるのにもかかわらず、
多くの人には知られていないことは、不思議ですらあります。
しかし、それほど自らが求めなければならないということなのかもしれません。」
地球の地軸の変化は、実際に起きており、地球上の水の配分が
変わったことがその要因になっていると言われている。とくに
海氷の融解の影響が指摘されているほか、近年多発する異常気象
による洪水や干魃なども誘引とされている。読み解けば、温暖化
の影響が顔を出すのは言うまでもない。地軸のズレは、今のところ
一日の長さが数ミリ秒の変化の可能性を招いている程度らしいが、
これが恒常的に続くのはどんなものだろう。
気づかないうちに変容していく地球の環境…。温暖化の指標は、あちこちに
潜んでいる。情報が溢れているはずの現代なのに、必要な情報が共有
されているとは限らない。情報の落とし穴はそこら中にある。