~~~治癒へのアプローチをシェアすると…
稲田陽子
偶然、養老孟司さんの動画を視聴することがある。
それによると、最近のニンゲンは AIに似せようとしている
という。自然を失った人工的な環境や暮らし方のおかげで、自分が
何者か分からなくなり、自然の産物であることを理解できなく
なっているのが、簡単に言ってその原因らしい。これは、AIが
人間を補うものとして作られるはずなのに、それを見る人間の意識には
AIの中に「理想化された自己像」かなにかを見る傾向があるためなの
かもしれない。
科学の世界で培われた虚構であっても、AIに感情があると
錯覚するであろうか。しまいには、自己をAI化することにも
躊躇がなくなるのだろうか。
そうなると、身体に気が流れなくなると言っても、なんの
弊害もないと思うのだろうか。
気は、まだまだ未知の領域でもあるが、量子物理学の発達とともに
その信憑性はますます大きくなるものである。
そうした中、千島学説で提唱された「気」は、最も未来の科学を
暗示するものであり、まさに生きる「気」を科学が後追いしていく。
千島学説では、「気」とは、目に見えないものとして、東洋の気だけ
でなく、古代ギリシャのプノイマ、プシケ、古代インドのプラーナ、
英語のスピリット、ドイツ語のガイスト、フランス語のエスプリにも、
大気を呼吸して神、霊、活力、魂につながる直感的な精神や心の働き
があるとみなしていたようだ。
ここからも、気が私たちの身体と密接な関係にあることが示唆
されており、千島学説の第8原理には、「生命弁証法」、「波動と
螺旋運動」が生命現象を象徴しているとしている。「病は気から」
というのも、気を氣と表すとわかりやすい。稲田は、その著書
『ガン呪縛を解く』の中で、「気」=上昇気流、雲気=スパイラル、
米=米粒のように小さなもの=量子と捉えると、「気」は量子論を
シンボライズしているかのようだと、記している。つまり、量子論的に
心と身体はつながっていることになるわけである。
千島博士は、こうした現象を心身一如の弁証法と呼んでおり、まさに
言い得て妙である。
一方、近年イギリスから伝わったホメオパシーは、どうだろうか。
英王室でも使われているという伝統的な療法として、欧米では
人気が高く、一般にも流布しているという。歴史は古く、200年以上も
前に医師のハーネマンによって編み出された療法であった。ホメオパシーの
材料となる鉱物や植物などは原形は留められず、天文学的な数値で
水による希釈がなされている。いわば材料は情報となり、心や体の
改善に取り組まれる。
別名、同種療法とも呼ばれ、これは、症状を抑制するのではなく、
むしろ引き出す「情報」の摂取で症状を改善できるという。
長い間使われ、症例も非常に豊富である。しかし、現在の科学での証明は
難しいものと思われ、日本の風土ではなかなか信じられないのではない
だろうか。
とはいえ、セルフケアや専門のホメオパス相談の普及だけでなく、
クリニックで臨床に使う医師も珍しくなくなっている。ただし、どのレ
メディーが合うのかを見出す判断が難しいこともあるようだ。十分な面談が
必要であるのは言うまでもない。
それにしても、見えないものが体や精神に作用するとは、今の科学では
不思議なことであると捉えられているものの、これは千島学説的に言えば、
「気が気に作用する」ようなことかもしれない。気を癒すのは、「同種の気」
であるという意味だ。
さて、千島学説にしろ、長い伝統のあるホメオパシーにしろ、未来に希望が
託されているのは同じである。要するに、科学のさらなる進展があれば、
現在は不思議だと思われていることが、至極当たり前になってしまう
のではないだろうか。少なくとも、 AIには気が流れていないというのは、
忘れたくない。
参考図書/『ガン呪縛を解く~千島学説パワー』稲田芳弘著