道東の大自然と人情が息づく、戦後間もない昭和30年代…。
アイヌ文化が香る弟子屈のスーパーヒーロー・大鵬の家族や
人々とのあたたかな交流など、すべてがノスタルジックななか…
新米医師の任地、若き日の弟子屈、川湯を
舞台に香しく痛烈な青春を描く自伝的フィクション。
上巻(帯コピーより)
弟子屈、川湯、そして摩周の大自然に抱かれて、結ばれた切ない恋を、あなたは許せますか。
戦争の影を背負う遥の美しさと不条理…。
遥の愛したショパンのノクターンが、輝く夏の光の中で、すべてを癒してくれるだろう…。
みんな、そう思っていた…。
下巻(帯コピーより)
なぜ、遥はこの恋に賭けたのか。
聴こえますか…。ポン・チャシで流れたモーツアルト第21番2楽章のあの旋律が…。
遥と瓜二つの恋人、亮子の影響で洗礼を受けていた「ぼく」に押し寄せるラスト、衝撃の愛の結末は、恩寵なのか、罪なのか。
ラストまでノンストップで読者を引き込んでいく。
目次…
『はるか摩周』上巻
●第一部 スイートJuly
- 第一章 郷愁の日々を訪ねて
- 第二章 川湯温泉診療所
- 第三章 ひまわり、揺れる
- 第四章 ショパンが聴こえる
- 第五章 和琴半島へ
- 第六章 扉は開かれた
●第二部 戦争、遥の光と影
- 第一章 君に伝えたい『はるかな摩周』
- 第二章 鳥海山は輝いた
- 第三章 北帰行、戦後の始まり
- 第四章 弟子屈の灯火
- 第五章 永遠のエピローグ
『はるか摩周』下巻
●第三部 真夏の光輪
- 第一章 たぐり寄せられる夏
- 第二章 モーツアルトピアノソナタ第14番
- 第三章 亮子
- 第四章 カヌイヌプリの頂上
- 第五章 幻影の中で
- 第六章 夏の夜のポンチャシ
●第四部 果てしない最終楽章
- 第一章 華やぐ晩夏
- 第二章 ブルーサファイアと湖面の星々
- 第三章 遥かな人よ
- 第四章 黄金色の並木道の果てに
●あとがき
●編集者のひとりごと
(「編集者のひとりごと」より抜粋)
この小説は、主人公の遥を軸に戦争に翻弄される青春、二世代にわたり戦争の影を引き受ける登場人物たちの姿、大自然の持つ癒しと再生の力、医師として奮闘するもう一人の若き主人公「ぼく」とそこに生きる人々との人情あふれる交流、そして、美紗子の影、亮子の影が内在する遥と「ぼく」の香しく痛烈な青春の記憶…長編ならではの伏線に加え、多くの暗示が込められながら、さまざまな物語が語られてゆく。それは、さながらミステリー小説のようにスリリングな要素を持って、読者に迫ってくることだろう。
作者の後藤壮一郎氏は、信仰や自然そのものに備わる癒しの力を大きな背景として、多岐にわたる豊富な知識と医師としての数えきれない体験を基盤にこの痛ましい長編を編み出し、私たちに人生の癒しと生き方を想起させている。幸いにして戦争の悲劇を身近に知らない若い人たちにも、ぜひ愛読してもらいたい好著である。(稲田陽子記)
モーツアルトのピアノ協奏曲第21番2楽章の旋律が流れるポン・チャシに、
忘れ得ぬ愛の記憶がいまも刻まれているでしょうか。
戦争の中の青春、愛…そして戦後が始まり、昭和30年代には
戦争の影を背負う遥の青春も花開いていこうとしました。
一瞬の光芒を放つひまわりのように明るい夏…
主人公のぼくと遥は互いに魅かれ合った…。
まるでミステリー小説のように、いろいろな伏線があるなか、
ショパンやモーツアルトなどクラシックの名曲たちもまた、
まさにもう一つの語り部としてその伏線に加わっていると言って
よいかもしれません。
終始登場する「鷲鼻婆さん」のキャラクターは、この小説に
ユーモアと重要な陰影を与え、興味深い名脇役としての面白さも
大いに注目されます。(2015.7/22「新刊発刊」お知らせ/稲田陽子のブログより)