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1999年12月:この歴史的ターニングポイントに… | 稲田芳弘コラム
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1999年12月:この歴史的ターニングポイントに…

 いよいよ二〇〇〇年へのカウントダウンが始まった。千年に一度しか体験できない歴史的な結節点…、その瞬間を地上で生きて迎えられる幸せを、ともに心から噛みしめたいものである。
 とは言いながらも、今年の大晦日から二〇〇〇年の元旦にかけて、世の中の現実はとても「幸せを噛みしめる」どころではないようだ。
 報道によれば七割以上の企業が危機管理体制を敷き、不測事態の勃発に備えるという。二〇〇〇年という新しい千年紀は、ハッピーな気分というよりは、どうやらハラハラドキドキの幕開けとなりそうだ。
 以上は言うまでもなくコンピュータ2000年問題に対する社会の対応だが、それにしても面白いのは「深刻な事態は起こらない」としながらも、その一方で社会全体が「万が一」の備えをしているということだ。これは完全に論理矛盾である。Y2Kが本当に大した問題でないのなら、千年に一度しか味わうことのできないその歴史的瞬間を、みんなで楽しく祝って当然ではなかろうか。

 深刻な事態など起こらない 。にもかかわらず「万一」を考えて危機管理体制を敷く。もしそれが本当だとしたら非常に立派なことである。なぜなら日本はこれまで危機管理対策がまるでなっていなかったからだ。しかし「深刻な事態が起こりうる」と考えているのにあえて「大丈夫」と宣言しているのなら、それは国民を欺き、多大な犠牲を強いる行為になるだろう。本音と建て前の乖離の隙間にこそ、悲劇が大発生しうるからである。
 そんな疑いを抱かざるをえないのは、「Y2Kに備えて二、三日の備蓄を」と国民に呼びかけながら、政府はその一方で「食料危機」を想定した「食料安保マニュアル」を準備しているからである。これは「日本農業新聞」のトップ記事として一〇月に報じられた内容だが、なぜ食料危機なのかと言えば、石油の途絶(輸入減少)が考えられるからとのことだ。もしも日本の経済と暮らしの原動力たる石油に支障が生じたとすれば、当然石油依存型の近代農業も重大な影響を被り、その結果食料生産ができなくなる。そこで政府は「脱石油型農業」を模索し、いざという際には価格統制、配給体制を敷こうというわけである。

 「二、三日の備蓄」と「食料危機・食料安保」という認識の間には、天と地ほどの差がある。が、これまた「あくまでも万が一」ということなのだろう。しかし時代の大きな流れを見れば、今日の暮らしがいつまでも変わらずに続くということなど考えられない。だとすれば、二〇〇〇年という年を価値観と社会システムの大シフトチェンジの年として位置づけ、むしろ積極的に政策転換を図っていったほうがベターとはいえまいか。
 例えば自動車。今年の国際モーターショーでは環境に配慮したクルマがずらり会場に勢揃いした。なかでも特に目を見張ったのが燃料電池だった。
 これは水素と酸素を反応させ電気を作り出すものだが、もしこれが実用化されるとなると社会システム全体が大きく変わってしまう。というのも、それはコンパクトで手頃値の自家発電機を家庭や企業に大量供給をするからで、そのあかつきには巨大な電力産業が不要になる。つまり自動車技術が社会全体を根底から変えてしまうのだ。
 この場合、問題は水素をどこから調達してくるかだが、それには長崎総合科学大学の坂井教授が開発した雑草から簡単に作り出せるメタノール(バイオマス技術)がベストだろう。この技術はもうとっくに開発済みで、すでに実用化段階に入っている。しかもその材料は雑草で良いのだから、黙っていても雑草がどんどん生えてくる温暖多湿の日本は世界に誇る資源大国ということになる。要するに「燃料電池」の技術と「バイオマス技術」をストレートにつなげることで、環境問題やエネルギー問題がたちまち解決してしまうのだ。

 こういった書き方をしてしまうと、オカルトじみた話に聞こえてしまうだろうか。しかし現にその雑草のメタノール化装置を三菱重工が作り、農水省も通産省も長崎県もこの技術を支援しているのだ。ただこれは現行の社会では「痛し痒しの技術」で、いきなりこれが社会に浮上してしまってはいまの社会システムがガタガタになる。ゆえに石油から雑草エネルギーへの転換は、できるだけ産業や社会に問題を引き起こさないよう、徐々に進めていきたいというのが本音なのであろう。
 以上はほんの一例にすぎない。
 言いたかったことは、これからはすべてが根本的に変わらざるをえないということだ。そしてその格好の節目が、二〇〇〇年ということだろう。その意味でY2K問題は、これまでの生き方や社会のあり方(システム)を根本的に考え直させてくれるまたとないチャンスとはいえないだろうか。

 ついつい大上段から振りかざしてしまったが、個人的にはY2Kも睨んで身近に可能なエコシステムなるものを考えてみた。例えばトイレに流す水は雨水で充分。いざとなったらスウエーデン方式のバイオ処理(エコトイレ)を行い、そこから作り出される肥料は裏の畑に入れる。また暖房に関しては何でも燃やせる頑丈なストーブを用意し、土自体が持つ保温力を利用するために半地下の土間(レンガ敷き)に置く。いわゆる縄文住居の現代版だ。そしてその屋根部分はフラードーム。直径五・五メートルのステキな空間が、なんと材料費二〇万円足らずで出来てしまうのだ。
 こうして実際にやってみると自立型の暮らしはとても合理的にして面白い。これに加えて雑草メタノールを利用した自家発電が現実化したら、外部に依存するライフラインがほとんど不要になる。が、もしもこのような自立型エコシステムが社会全体に普及していったら、巨大なライフライン産業はきっと困ってしまうことだろう。しかしこうした脈流がもうすでに生まれ出しているのだ。
 実際、ある外食企業などはエコシステム(リサイクルシステム)やコ・ジェネ(熱&電気自給)などに本格的に取り組み始めている。これは決してY2K問題対策のためではないが、結果的に「万が一」に強い事業システムとなっている。こうした流れはもはや止められず、そこに次代のシステムの萌芽が見える。つまり石油と電気で動く巨大なピラミッド社会が根底から揺らぎ出したのだ。

 その意味でも二〇〇〇年は大きなターニングポイントだ。
 ターニング・ポイントである以上、二〇〇〇年からは全く新しい視界が開けてくるだろう。その風景(光景)は従来の価値観からすれば不安と混乱を予感させるかもしれないが、しかしそれは実際には希望の風景と言えるだろう。
 すなわち、集団から個人に、集中管理から分散的自立に、強制的秩序から本然的自由に、男性原理から女性原理に、競争から協力(共生)に、堅牢なピラミッドシステムからフラットでフレキシブルなネットワークシステムに、あるいは分析から統合に、合理から直感に、直進から循環に、膨張から集約(収縮)に、定住から遊民に、優劣から個体差に、呪縛から解放に……と、価値観も力学もシステムもきっと大きく劇的にターンしていくことであろう。そして大変化のその引き金を引くのがY2K問題と言えるのかもしれない。

 こう考えると「深刻な事態」が起こったとしても、それは決して深刻なものではない。もっとも一時的には不安や混乱に襲われるかもしれないが、むしろそれは「進化の始まり」になるだろう。スクラップ&ビルドではないが、新時代の建設のためには破壊もまたそれなりの意味を持つのだ。
 いずれにしても二〇〇〇年まであとわずか。いま世の中で起きている事象を見れば不安や悲観へと誘われがちだが、視点を変えてそれらを「再編集」し直せば、そこには希望が芽生えている。大事なのは、どうやら希望を編集する能力のようだ。

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