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2000年09月:What is IT? そして、Who am I?

 沖縄サミットを契機に、いよいよ「IT革命」が世の中の空気を熱し始めた。新聞からもテレビからも、「IT」なる言葉が大手を振るって飛びだしてくる。ここまでITが流行語になってしまうと、ついWhatis IT? (それって、いったいなぁに?)、あるいは「ITよ、いったい、てめいは?(何者だ!)と、皮肉っぽく茶化したくもなってしまう。実際、IT革命はいったいどんな社会を作り出すのだろう。
 そんな関心がふくらんできたせいか、書店に行くといっぱい「IT本」が山積みされ、IT革命がもたらす社会の姿がスケッチされている。いずれも未来的でワクワクする内容だ。しかし、そのときわが社は?自分は?といった胸騒ぎが、心のどこかから沸き上がってくるのではなかろうか。
 そうなのだ。IT革命は世の中をすっかり変えてしまう。それは文字どおり革命的なパワーをはらんでいる。革命的である以上、何かが壊されて新しい仕組みが出来上がる。だから問題は、果たして自分が壊される側に立っているのか、それとも新しく生まれてくる波を楽しくサーフィンできるか否か…という点に尽きるだろう。
 ということから、これからは「わが社もITを!」といった動きが始まってくるにちがいない。で、経営者は担当者を呼び、「ちゃんと対策を立てろよ。わが社もITの波に乗るのだ」と高らかに宣言し、なにがしかの予算を確保してIT武装を始めることだろう。しかし大事なことは「Whatis IT?」だ。これをトコトン問うことなく重武装したとしても、それは戦略もないままに戦場ファッションに自己満足しているようなものだろう。

 そういえばコンピュータ普及の草創期に、「わが社もコンピュータを入れたい。で、いったいそれはどんなことに使うのかね?」といった質問を受けたことがあった。またWindows95の発売時に、パソコンもないのにブームに押されてソフトだけ買った強者もいた。昨今のITブームでも、下手をすると同じヘマをやりかねない。それではITがイテェ!(痛い)になってしまうだろう。
 実際、すでにIT革命の話題が巷に湧き始めている。そんなとき、ぼくは涼しい顔で言う。「社長さん、IT革命はまずあなたからですよ。あなたの骨の髄からIT革命が始まれば、おのずから感じるもの、見えてくるものがありますよ」と。
 見えてくるものを一言で言えば、それは無重力感覚だ。つまり重さや大きさの支配力がまるで働かない。重力世界では横綱曙と幼稚園児が相撲をとれば結果は言うまでもないが、無重力世界で曙が叩き付けても、園児が土俵にめり込むことはない。互いにプカリプカリ浮きながら相離れていくのみである。
 これまでの社会の特徴を一言で言えば「管理されたピラミッド型秩序」で、その根底にある価値観は競争であり、勝利の美学であった。早い話、競争に勝った者がピラミッド組織の頂点に立ち、社会システム全体の管理者(支配者)となる。そしてこのシステムを支えてきたものこそ、しつけや教育、社会常識、マスメディアなどをも含めたこれまたピラミッド型の情報管理(支配)だった。
 ところがインターネットやメールなどの登場により、従来のシステムに風穴が空いた。そして情報の支配的管理が崩れることにより、システムを秩序正しく動かす機能に障害が生じたのだ。
 ベルリンの壁の崩壊こそ、まさにそのシンボリックな出来事だった。それがいかに堅固な壁ではあっても、空中を自由に飛び交う電波情報やFAX情報などは阻止できなかったのである。
 こうしてIT革命はドラスティックにピラミッド型秩序を崩し、ネットワーク型システムをどんどん広げていく。前者は固定型の「管理による秩序と安定」を美徳とするのに対して、後者は波動型の「共鳴(共感)、干渉作用によるカオスからの創造」をよしとする。その意味でIT革命は、過渡的ではあっても従来の社会システムや人々の考え方に混乱を引き起こしていくことであろう。
 と同時に、それは大失業時代のトビラも開く。沖縄サミットはITサミットとも呼ばれるほどIT化が謳われたが、しかしそれは、サミットがここ数年声高に警告している「グローバリゼーションの負の側面」を急激に浮上させることにもなる。
 だからこそ沖縄IT憲章でデジタル・デバイド(格差の拡大)を懸念してもいるのだが、IT革命によるグローバリゼーションの加速は有無を言わさず貧富格差の拡大を押し進めるだろう。が、問題は、自分がどこに立っているかということだ。日本は?わが社は?そして自分は? すべてが分水嶺に立たされているいま、この一滴の水が、天国に行き着くのか、それとも地獄に行き着くのか。
 だからこそ「トップ自らのIT革命」が必要になってくる。つまり、実際に無重力感覚を体験してみることだ。ちなみにインターネットでどこかのフォーラムに参加してみよう。すると、たぶん自分がすっかり丸裸にされてしまうだろう。普通の社会では「○○会社の社長です」というだけ(名刺を見せるだけ)で自分の存在が誇示できても、ネット上では「ん?それがどうした」ということで終わってしまう。要するに、カタチ(組織)の大きさや役職の重さだけでは全く何も始まらないのだ。
 これはショックにちがいない。しかも普段なら鼻にも引っかけなかったような若造が、フォーラム上では大活躍している。事実、無名ではあってもすごい人物があちこちにいる。学歴も経歴も、所属も年齢も、また住所も顔も不明だが、ネット上で発言する内容がとにかく面白い。こうなると、どんなに有名なタレントも政治家も学者も役人も顔負けだ。なぜならネット上ではフォーム(形式)よりも、個性や人となりなどの内容そのものがものを言うからだ。
 ショックと同時に、楽しさもまた味わうだろう。思いがけない人物との出会いなども多いからだ。そしてオフ会…、言葉だけで交流してきた人たちと実際に顔を合わせて楽しく語らう。そこには会社にはなかった刺激や発見などがいっぱいあるにちがいない。

 以上はIT体験のほんの個人的な一部にすぎないが、これと同じようなことが社会全体に起こってくる。そこでは組織の大小や知名度などには関係なく、面白いこと、役立つサービスだけが多くの人々からの共感波を呼ぶ。実際「ビジネスモデル特許」で「囲い込み」をする動きに対し、そうした企業に対する不買運動なども起こり始めた。と言っても、しばらくは特許や知的所有権が大きくものを言うだろうが、やがてはオープンで自由な情報世界が広がっていくにちがいない。
 となると、いくらお金をかけてIT重武装してみても始まらない。トップ自体が骨の髄からネット感覚を身につけることこそが求められるのだ。
 そしていざ情報ネットワークの海に身をさらしてみると、何となく本当の自分が見えてきたりもする。肩書きの自分ではなくて、裸の自分が見えてくるのだ。このプロセスは会社にとっても必要だ。わが社はいったい何をもって社会に役立とうとしているのかをじっくりと考えることが…。
 とはあれ、インターネットなどのIT革命の広がりは、人々の意識を変え、やがて社会システムを根本的に変えてしまうだろう。というのも、その世界では、もはや管理(支配)ができない。そこは無数の共感波や干渉波がランダムに交錯し合う、さまざまな個性の出会いと情報の海だからである。しかも波長の噛み具合いかんでは、それは創造的な大潮流にもなれば、逆に暴力的で破壊的な大津波にもなってしまう。そうしたプロセスを経てネットワーク感覚が磨きあげられ、社会システムもまた変革されていくことになるのだろう。
 沖縄サミットで合意されたことは、実はこうした社会への移行宣言だった。IT革命は決して組織ではなく、あくまでも個人を基本として進んでいく。となると、日本独特の集団主義は邪魔にこそなれ、IT革命のアクセルにはなりえない。だからこそ担当者を呼んで「検討せよ」では全く意味がないのだ。
 「What is IT?」の次にくる問いは、どうやら「Who am I?」ということになりそうだ。自分が見えていてこそネット社会でのサーフィンが楽しめる。真夏の沖縄で大変な宣言をしたものである。

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