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粘土団子 | 稲田芳弘コラム
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粘土団子

 というわけで「粘土団子」が登場してきますが、その概要についても紹介します。


 粘土団子というのは、耕さず、肥料をやらず、除草もせずに作物を育てるためのいっさいが集約されたものですが、簡単にいえばこの中に、実は耕すことの意味、肥料をやることの意味などのすべてが詰め込まれているともいえるんですよ。
 その作り方はしごく簡単で、とにかく手当たりしだいにいろいろな種を百種類以上集めて混ぜ合わせ、それを粘土といっしょに混ぜて団子状にすればいいんです。
 たったこれだけのことですが、こうして作った粘土団子を適当にばら蒔きます。するとその中で一番その時どきの環境と時期に合った種が芽を伸ばして、やがて根を張って育っていくというわけです。
 百種類以上もある種の中からどれがまず芽を出すか、それは自然そのものが決めてくれることです。生命力のない種やその土地の環境に合わない種は、とうぜん芽を出すことはありません。しかし百種類以上もの種をいっしょに蒔けば、必ずやその中のいくつかの種が芽を出すことになる。つまりそこで育つにふさわしい種だけがまず芽を出し、土に根を張っていくというわけです。

 人間は、米なら米だけ、大根なら大根だけを作ろうとして、一種類の種を蒔こうとします。しかしそういった人間管理的な勝手な秩序は自然の中にはありません。だから自然は本来のバランスを回復しようとして、いろいろな植物をそこに芽吹かせてくるんです。
 しかし人間はそれを「雑草」と呼び、あるいは「害虫」と呼んで、そういった計画外の邪魔ものを駆除しようとする。そしてそのために必要になってくるのが除草作業や除草剤であり、殺虫剤というわけです。
 
 どんなに虫がいたとしてもそのままにしておきます。普通なら「害虫」といって嫌うわけですが、虫が食って食べられない大根は一本もない。いったいなぜだろうと、大学の先生たちも不思議に思う。その理由は害虫も多いけれど天敵もたくさんそこにいるからです。だからどんなに虫がいても被害が出ない。すなわち、自然はちゃんとバランスを保ってくれるというわけです。
 
 よく害虫で畑や山林が全滅したなどといった話を聞きますが、害虫や病源菌というのは、植物の寿命がきて、80%は枯れてもいいときにやってくるものなんじゃないでしょうか。
 つまり害虫がついたから作物に被害が出るというんじゃなく、実はもう弱りきって死期が近づいているからこそ害虫が発生してくるともいえるわけです。
 だから害虫というのは決して作物に被害を与える「原因」ではなく、むしろ「結果」であって、植物の健康度を教えてくれる存在であるのかもしれないんです。もっと分かりやすくいえば、自然から死ねと申し渡されるときに害虫がきて片付けてくれる(笑)。

 自然はとにかくいろんなことを私たちに教えてくれているんです。実は、たとえ乾燥した場所であっても大根が生えるということを教えてくれたのがこの場所なんですよ。
 いったいなぜ、こんなに固くて水分の少ない土に大根が育つるのか。しかも肥料など全くやらずに…。ただ土があまりにも固いものですから、大根は根を下に下ろすことができず、上に伸び上がって大きくなるんですが(笑)。
 こんな土でも立派に大根が作れるわけですから、砂漠で作れないはずがありません。要は、まず大根の育つような環境を砂漠に作りだしていくことなんです。
 
 十三年間で固い荒れ地がこんなジャングルになったのですから、それと同じ方法でやればいいんです。すなわち、まず粘土団子をばら蒔いて、砂漠の中でも芽を出す最初の植物に期待する。その点では、ハヤトウリなどがぴったりだと思います。ハヤトウリなら一本が根付けばかなり広い面積を緑の葉っぱで覆ってくれますからね。
 
 ところで問題は砂漠のようなところで、いかにして根付かせることができるかという点ですが、そこに実は粘土団子にして蒔くということの意味があるんです。
 すなわち一つの粘土団子には水分も養分もちゃんと含まれていますから、そのぶんだけでも一日に四、五十センチもの根を伸ばすパワーをもっているんです。
 こうして粘土団子の力に支えられて芽を出し、根を伸ばし始めたハヤトウリの根が二、三メーターも伸びれば、砂漠とはいえその辺りには必ず湿りけのある土があります。すると根は、地下にある水源に向かってさらにいっきに伸びていく。その結果ついにしっかりと水続け脈にタッチすることになるわけです。
 ハヤトウリが砂漠に根づけば、一株で約一反(一千平方メートル)もの空間を緑で覆います。そうすればいくら灼熱の太陽に焼かれていた砂漠の地表であっても、温度が下がる。すなわちハヤトウリが、それまでの砂漠とは全く違った自然環境をそこに新しく作りだしてくれるわけですね。
 
 緑の葉っぱで大地が覆われれば、地表温度が下がるだけでなく、とうぜん露も葉っぱにつくでしょう。それが砂漠の土に湿りけを与え、さらに自然環境を整えてくれる。こうなればもうしめたもので、粘土団子の中の他の種も発芽できる環境ができあがります。しかも砂漠とはいえ、全く雨が降らないというわけでもありません。雨が降ればさらに環境が変化していきますから、やがてさまざまな種が発芽して緑に覆わ
れていくというわけです。
 こうして一度砂漠を緑で覆ってしまえば、逆に植物が出す水蒸気が雲を作りだすという現象も生じてきます。こんなふうにいいますと、じつに都合のいい勝手な理論と思うでしょう(笑)、しかしこれは実際にすでに実証済みのこと。インドで実際にやってみせてきた事実なんですよ。

 いま砂漠の緑地化には、アカシアとかポプラとかユーカリといった、砂漠に有効と考えられる木だけを植えようとする試みがなされていますが、しかしいままでに成功したためしがありません。むしろ砂漠化に拍車をかけるだけなんです。
 現在行なわれている緑地化の方法とは、たとえば砂漠にユーカリなどの苗木を植えて、それが枯れないように毎日せっせと水をやり続けるといった方法です。これにはたくさんの人々の手がかかるのは当然で、しかも実は木そのものに対しても決していい影響を与えません。
 というのも、人間がせっせと毎日水を運んできてくれるものですから、植物はすっかり安心してしまって自分の力で根を伸ばそうとはしなくなるからです。おまけに水をまけばまくほど土が固くなってしまって、結局は木が枯れてしまうか、たとえ育っても弱々しく立っているにすぎない(笑)。
 いきなり木を植えてみてもほとんどむだで、下に草が生えてこそ木々も育つんですよ。そして、草が土や自然環境を作ってくれる。これまでは土が植物を育てると思ってきたわけですが、実は植物が土を作ってくれるんです。
 
 見た限りでは単なる雑木や雑草の山に見えますが、たしかにこの山で僕はたくさんのことを教えてもらったと思います。
 ここは果たして畑なのか、果樹園なのか、あるいは単なる山林なのか。日本の百姓は、これを見たらきっと腰を抜かして驚くことでしょう。実際に税務署でも、いったいどのジャンルに分類したらいいのか判断に困っていた(笑)。だから一番安い税金を収めることでなんとか済んでいるんですよ(笑)。

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