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「書きかけの原稿」 | 稲田芳弘コラム
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「書きかけの原稿」

●クリティカル・パス

アメリカではY2K問題において「ミッション・クリティカル」あるいは「クリティカル・ミッション」という言葉が盛んに用いられた。 クリティカル(critical)には「重大な・危機的・決定的」といった意味がある。 Y2Kにおけるミッション・クリティカルは「最優先・最重要課題」といった文脈で使われており、それはそのまま十分なY2K対策が時間的に間に合いそうもないないことを物語っていた。

 そんななか、フラーの『クリティカル・パス』(梶川泰司訳・白揚社刊)が日本で翻訳出版された。 この本は一九八一年にアメリカで出版されたものだったが、九八年のどん詰まりに至ってようやく日本に紹介されたのであった。 フラーの『クリティカル・パス』は決してY2Kを意識して書かれたものではない(その時代にY2K問題の認識はまだなかった)。 しかしそこにはまさにY2K危機を予感させるような時代的リアリティがあふれていた。

フラーはその序章の第一行目に、次のように書き始めている。
「人類は危機のただ中へと進みつづけている……先例のない危機へ」
そしてこの先例のない歴史的危機を突破するためのクリティカルなパス(道・進路)を、その中で語っていたのである。
しかもフラーの見つめる視点は壮大で、「宇宙船地球号」の上に生きている「人類の現実」に関して次のように語っている。
「人類にとっての宇宙エネルギーの収入は、すべて水力、潮力、波力、風力、植物が生成するアルコール、メタンガス、火山活動といった、われわれの重力と星(その九九%が太陽)がもたらす宇宙の配当から成り立っている。
人類の現在の総エネルギー消費は、そのエネルギー収入の割合から見れば一%の、さらにその一〇〇万分の四にすぎない」(『クリティカル・パス』序章)

つまり、宇宙船地球号に与えられているエネルギーを上手に消費しさえすれば、全人類は十分に高い生活水準を維持することができ、そのことに気づくことこそが危機を突破するクリティカル・パスというわけだ。 これは決して単なる理想論でも、はかない空想でもなく、フラーは科学者としてその道を分かりやすく説明し、かつ具体的な方策を示してくれていた。 それだけにそれはそのまま、Y2K危機を乗り越えるクリティカル・パスのようにぼくには思えた。

フラーの思想に関しては改めて述べるとして、Y2K問題でぼくが発言しようと思ったのには、まさにこの『クリティカル・パス』が大きく後押ししてくれたことがあった。 クリティカル・パス的な視点から見れば、Y2K問題は絶好のチャンスでもある。なぜならそれは、これまでの思い込みを完全に払拭してくれる契機にもなりえたからである。

視点を変え視野を開く

「思い込み」にはいろいろあるが、まず第一に指摘しなければならないことは、「エネルギー危機」や「食料危機」といった「絶対的不足感」の思い込みであろう。 しかしエネルギーは決して不足しているのではなく、フラーに言わせれば「人類の総エネルギー消費は、そのエネルギー収入の割合から見れば一%の、さらにその一〇〇万分の四にすぎない」のだ。
不足気味なのは化石燃料に関してだけであって、自然のエネルギーや植物が生成するアルコールなどを利用すれば十分に間に合う。 しかし現実はまぎれもなく、世界中が化石燃料で動き、化石燃料が世界の経済活動や人々の暮らしを支えている。二〇世紀は経済・産業の世紀、石油の世紀などと言われるが、だからこそ「化石燃料危機」がもたらされたのだ。
詳しくは後で述べるが、フラーはブラジルの工業化に対して、植物が生成するアルコールを利用することを主張した。 そしてその提案は採用され、ブラジルではサトウキビから取ったエタノールで工場も自動車も動いてきた。 サトウキビは毎年大地と水と太陽によって生産できる持続可能なエネルギーである。 つまり、ブラジルのように石油やガスや石炭を使わなくても、工業社会も文明社会もちゃんとりっぱに成り立ちうるのである。
にもかかわらず、私たちは「エネルギー=石油」といった思い込みに支配されてきた。確かに現実としては、石油がおかしくなれば文明社会がストップする。 が、それはかつてのコメ不足が「食糧危機」に拡大解釈されたようなもので、絶対的な不足を意味するものではない。 視点を変え、視野を開けば、さまざまな可能性が見えてくるのである。

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